災害大国と言われる日本では、防災意識や準備が生活の一部とされています。しかし、地域に住む全ての人が同じレベルの防災知識を持っているとは限りません。特に多文化共生の地域では、外国人や独居高齢者といった災害時の支援が必要な人々が多く住んでいます。豊島区も例外ではありません。豊島区の現状と課題を分析し、地域連携を通じた防災の第一歩について考えていきます。
豊島区の現状
豊島区は、東京都心部に位置する多文化共生地域であり、独特の人口構成を持っています。
- 人口と外国人比率
豊島区の総人口は294,955人で、世帯数は188,381世帯です。そのうち外国人住民は36,400人で、全体の12.3%を占めています。これは、約8人に1人が外国人であることを意味します。 - 高齢化率
豊島区の65歳以上の高齢者割合は約25.8%で、東京都平均を上回る水準です。区内の人口の4人に1人以上が高齢者という現状は、災害時における対応を難しくする要因の一つです。 - 独居高齢者率
豊島区の高齢者のうち、約45%が独居生活を送っています。この割合は東京都全体の独居率(約30%)を大きく上回り、地域コミュニティや見守りの必要性が一層高まっています。
これらの状況から、大規模災害が発生した場合、災害対応や復旧時に人手不足が懸念されます。年齢の若い世代が比較的少ないため、地域全体での助け合いが不可欠です。
豊島区災害予防計画の基本方針
豊島区の災害予防計画の基本方針は、次のように掲げられています。
災害時は、区民・事業所などによる自主的かつ積極的な災害防止活動が不可欠である。そのため、区民・事業所などは、「自らの生命は自らが守る」「自分たちのまちは自分たちで守る」という「自助」を防災の基本とし、災害に備える。また、区や防災関係機関は、区民や事業所等の防災対応力の向上を図るとともに、相互の連携や支援を強化し、「共助」による防災体制の確立に取り組む。 |
災害時にはまず、「自助」が基本として掲げられ、さらに「共助」による防災体制の確立に取り組むこととされています。「まずは自分の生命」を守ること。自分の生命を守ることによって、他の人たちの生命も助けられる、と考えることが大切です。そして、地域に暮らす人たち全体で、相互の連携や支援を強化していくためにも、日頃からのコミュニティ形成がとても重要になります。
外国人が抱える課題
日本に住む外国人の多くは、地震や台風といった自然災害に対する経験が少ないことが指摘されています。日本では毎年のように台風の被害が発生し、震度1以上の地震も、例年年間2,000回以上発生しています。その分、日本では日頃から台風や地震などの災害に備える意識が強いと言えるでしょう。
- 防災知識の欠如
母国では災害が少ない国から来た人々は、日本独特の防災ルールや避難方法を知らないことが多いです。また、海外では日本ほど頻繁に防災訓練、避難訓練などは実施されていないケースがほとんどです。 - 言語の壁
防災情報が日本語で提供されることが多く、情報の理解が難しい場合があります。特に緊急避難などが要する場合には、言葉で説明しきれない部分があります。それだけに、事前に避難訓練などを「体験」しておくことが大切になります。 - 文化的な違い
避難所生活におけるルールやマナーが母国と異なり、戸惑いやストレスを感じるケースも少なくありません。実は、避難所では「臭い」が大きなストレスの原因となります。その他、宗教、生活習慣が異なる中での避難所生活は、日本人にとっても外国人にとってもストレスの大きな原因となってしまいます。
これらの課題に対応するためには、外国人住民を対象とした防災知識の普及活動が欠かせません。
地域連携の可能性
大規模災害時には、言葉が通じ、日本とそれぞれの母国の生活習慣・文化などの違いを理解している外国人住民の中からリーダーシップを育成していくことが大事です。地域で多文化交流を進めることで、外国人住民も「自分の地域を守る」意識を持つようになります。また、外国人を雇用する企業にも、従業員の防災教育をしっかりと行っていく社会的責任が求められます。外国人に対する防災や地域との連携のための教育は、雇用者側の責任でもあります。
地域住民と外国人、行政や企業が手を取り合い、災害時に備えることで、より強固な地域連携が実現できるでしょう。